簿記初心者必見!商業簿記と工業簿記の特徴と違いをわかりやすく解説します!

簿記検定では商業簿記工業簿記という2つの科目を勉強することになるのですが、これから勉強しようとしている方は「この2つは具体的に何が違うの?」と疑問を持っている人も多いのではないでしょうか。

特に工業簿記は2級から試験科目に組み込まれてくるので、3級までしか勉強していない方もどんなものなのか分からないと思います。

そこでこの記事では、この2つの科目の特徴と違いを初心者にも分かるようになるべく噛み砕いて解説していきますので、一緒に見ていきましょう!

簿記の基礎となる商業簿記

まず商業簿記とは何か?という事から解説したいと思います。

「簿記」と耳にすればだいたいの方が商業簿記の事をイメージされるかと思います。

商業簿記とは商品売買業を対象とした簿記で、おおまかに言うと仕入先から商品を買ってきて、その商品を得意先に売るという流れを記録するのものです。

例えば、お菓子やおもちゃを仕入れてきて、利益を乗せてお客さんに売って利益を出すというようなもので、小売店や卸売業などがこの商業簿記に当てはまりますね。

仕入れた商品を販売したり、返品されたり、割引したり…という取引を処理していくものが商業簿記ということです。

まぁ他にも記録できることは沢山あるんですが、こういった会社での取引をすべてまとめて貸借対照表や損益計算書というものを作成するのが商業簿記の大きな流れです。

あんまり深く突っ込んでも訳がわからなくなりそうなので、広く浅く説明しましたw

というか、商業簿記は基本的に勉強範囲は広いですが、内容的には浅く深堀りするような内容もあまりないので、【広く浅く】というのが適当な表現だと思います。

簿記3級をすでに勉強されている方はこの商業簿記まではイメージしやすいかと思います。

では、2級に入ると試験範囲に入ってくる工業簿記はどんなものなのでしょうか。

難易度がグッと上がる工業簿記


工業簿記は2級で初めて出てくる科目で、商業簿記の【広く浅く】の真逆で【狭く深く】学習する科目です。

商業簿記は商品売買業を対象とした簿記であったのに対して、工業簿記は材料を仕入れ、その材料を使い、切ったり組み立てたりして1つの製品を作って売るという製造業(メーカー)を対象にした簿記という事になります。

製造業では仕入れた材料を加工して製品として販売しますので、その製品を作る活動を記録するという特徴があります。

商品を外部から仕入れることは商業簿記と変わりませんが、それは販売目的ではありませんよね。

会社内部で製造をするという目的のため仕入れをし、会社内部で製造したものを販売することが製造業の仕事の流れとなります。

工業簿記では、製品の製造という過程に関する取引記録や計算というのが追加され、商業簿記で学習する貸借対照表や損益計算書の他に製造原価報告書の作成も必要になってきます。

Check製造原価報告書とは?

製造業を営んでいる企業が作成する資料で、当期に販売した製品の製造原価を明らかにするために用いられる製造業特有の財務諸表のことです。損益計算書の補足資料として作成します。

この製造原価報告書の作成が商業簿記との大きな違いになり、多くの受験者を悩ませる原因になるんです。

管理人もこの工業簿記には相当苦しめられましたので忘れもしませんw

工業簿記は商業簿記と違って取引が連鎖しているため、1箇所間違えてしまうと全て間違ってしまう可能性があるという点は気を付けていかないといけませんね。

ただ、出題範囲自体は商業簿記に比べると狭いので、一度コツをつかむと芋づる式でどんどん理解できていくかと思います。

工業簿記の鍵を握る原価計算とは?

工業簿記では「原価計算」というものが重要になってきますので、それを少し説明しましょう。

工場などで働いたことがある方は聞いたことがあるかと思いますが、「コスト管理」という言葉があり、このコスト管理というのがつまり原価計算というものになります。

原価計算の種類としては以下のように分類できます。

■原価計算の種類
実際原価計算 個別原価計算 費用別原価計算
部門別原価計算
製品別原価計算
総合原価計算 単純総合原価計算
工程別総合原価計算
組別総合原価計算
等級別総合原価計算
標準原価計算
直接原価計算

ウ・・・あの頃の嫌な記憶がw

それはさておき、どの原価計算の種類においても1つの製品を作るのにどれだけの費用、原価がかかっていたのかということを求め、管理するのが目的であり、これが商業簿記にはなく工業簿記ならではのものになります。

商品売買業では仕入れた商品をそのまま売るため、売り上げた商品の原価は仕入れたときの価額となります。

一方で製造業では仕入れた材料をそのまま売るわけにはいきませんし、その材料を切ったり組み立てたりして加工をして製品を作ります。

その製品を売って利益を出していくわけですが、この作るための製造にかかった費用を計算する必要があります。

この製品の製造にかかった費用を「原価」といい、この原価を計算することを原価計算といいます。

まぁそのままといえばそのままですw

この原価には、材料のほかにその製品を作るための人件費や水道代、電気代などの光熱費も含まれ、製品の製造にかかった金額を「製造原価」というのですが、その分類について次の項で説明したいと思います。

製造原価の分類

製造原価はいくつかの視点から分類することができるのですが、まずは何を使って製品を作ったのかという視点から見てみましょう。

この視点からみると、製造原価は材料費・労務費・経費の3つに分類することができます。

例えば、木製の椅子を1つ作る時は木材や接着剤・ネジなどの材料費はもちろん、作る人も必要ですし、製品を作るためには電気代や水道代もかかります。

この場合、木材や接着剤、ネジなどを材料費、作る人のお給料などを労務費、材料費、労務費以外の費用(電気代、水道代など)を経費といいます。

要するにモノにかかった費用を材料費、ヒトにかかったものを労務費、それ以外が経費ということですね。

また、製品ごとにいくらかかったかという視点で見てみると、製造原価は製造直接費製造間接費に分類することができます。

先ほどの例を用いて説明すると、木製の椅子を作るために使用した木材代のように、椅子を作るのにいくらかかったかを把握できるものを製造直接費といいます。

電気代や水道代などのように、他の物を作るときにも使っているものもあると思いますが、このように椅子1つを作るのにいくらかかったのか明確に把握することができないものを製造間接費といいます。

まとめるとこんな感じです。

材料費 労務費 経費
製造直接費 直接材料費 直接労務費 直接経費
製造間接費 間接材料費 間接労務費 間接経費

これらを計算することによって、製品1つあたりの原価はいくらなのかということを求めるのが原価計算というわけです。

なお、この原価計算は1級では単独の科目として出題されますので、2級だけでなく1級も目指す方は最低でも苦手意識は持たないようにしておきたいところです。

工業簿記を勉強する上で覚えておきたい3つのポイント

工業簿記を勉強するにあたり、原価計算が一番のポイントになるとは思いますが、その他にも覚えておきたい点があります。

下記に3つご紹介しておりますので、確認しておいてください。

ポイント1:会計期間と原価計算期間は違う

会計期間という言葉は商業簿記でよく見かけるかと思いますが、この会計期間は期首から期末(決算日)までの通常は1年のことをいいます。

多くの会社は4月始まりの翌年3月終わりという期間で設定しています。

では、原価計算期間とはなんぞや?と疑問に思う方もいらっしゃるかと思いますが、これも言葉の意味そのままで、原価計算を行う期間のことを指します。

ただ、この原価計算期間は会計期間とは異なり、月初から月末までの1ヶ月間が対象になります。

会計期間のように1年単位で算出していたら、小さな無駄があった場合、積み重なってかなり大きな無駄になってしまいます。

このように原価計算期間を短いスパンで行うことによって、もし仮に原価に無駄が発生していた場合にも早めに改善することができるわけです。

ポイント2:工業簿記で新たに出てくる仕掛品

製品は材料を切ったり組み立てたり加工をして完成するので、いくつも製品を作っていると加工途中の未完成品が当然出てくると思うのですが、この加工途中の未完成品を工業簿記では「仕掛品(しかかりひん)」といいます。

材料を使うということはもちろん製品を作っているということですし、その作っている間はこの「仕掛品」という科目で記録をしましようという決まりがあります。

そして、この仕掛品が完成した時に初めて「製品」へと変わっていくのです。

この製品を販売するというのが製造業の大まかな流れとなり、工業簿記ではとても重要で大切なポイントとなります。

商業簿記ではこの加工途中の未完成品というのは出てくることはありませんでしたが、この仕掛品は商業簿記にはない工業簿記ならではのものになります。

ポイント3:財務諸表の表示が違う

商業簿記でも工業簿記でも「財務諸表」というものを作成しますので、その点は両者とも同じなのですが、この中身が違ってきます。

そもそも財務諸表とは何かと言うと、貸借対照表や損益計算書の事を指すのですが、まぁこれは簡単に言えば会社の通信簿みたいなものです。

この財務諸表の中身が商業簿記と工業簿記で違う理由としては、経営形態が違うためで、少しずつ表示の内容が異なってくるんです。

例えば、商業簿記では「商品」と表示されるものが工業簿記では「製品」と表示されます。

まぁ表示の言葉が違うだけで大まかな意味が変わるわけではありませんが、これから2級を学習していこうとしている方は多少「ん?」となるかと思いますので、頭の片隅にでも置いておいていただければと思います。

商業簿記と工業簿記の違いまとめ


ここまで、商業簿記と工業簿記の特徴と違いをご説明してきました。

2級から試験範囲になる工業簿記は商業簿記に比べると難解な部分はありますし、新しい言葉も出てくるので難しく思いがちです。

ただ、簿記の基本というのはあくまで商業簿記で、工業簿記にももちろん仕訳はありますし、減価償却の計算や前払費用の計算もありますので、商業簿記の応用編と考えていただければいいかと思います。

考え方のベースとなる部分は商業簿記と同じですが、そんな中で工業簿記のポイントはやはり「原価計算」になるかと思います。

問題が連動しているものが多く、1箇所間違えると悲惨な結果になってしまいます。

商業簿記と工業簿記には多少なりとも違いがありますが、取引を記録するということには変わりありません。

工業簿記は商業簿記とは違い「生産する」という記録が必要になり、この違いに尽きると思いますので、勉強をする際には実際の工場の流れをイメージをしながら学習すると良いでしょう。



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